防災三昧 by 地震前兆ラボ - 地震前兆研究家の百瀬直也による地震予知・予測・防災情報

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【前兆】2014年の台風19号は日本列島縦断し、数多くの地震の震源となる地点を「迂回」していった?

今朝、Facebookで、例によって「過去の思い出を振り返ってみましょう」の通知が来た。
「○年前の今日」の自分の投稿などで、「探求三昧」ブログの2014/10/16の記事があった。
台風19号は直後に地震震源となる地点を通過していた?』と題したもの。


あーーー、この頃はまだ、その後に震源となる地点を台風が「迂回」するというアイデアは、まだ思いついていなかったのかな。


tankyu.hatenablog.com
 

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しかし、上記の記事を見ると、問題があることに気づいた。
まず、下記のマップを見ると台風の予想進路図を使用ていること。

【目次】


これは、台風が実際にその地点を通過した後の、確定した進路図を使わないといけないのだ。
たとえば、「紀伊水道震源など、黄緑色の丸印が台風の進路と完全に重なってしまっている」と書いている。


この頃は、すでにGoogle Earth地震研究目的で使用してはいたが、台風の経路情報データのKMLファイルの存在には、まだたどり着いていなかったのだろう。

台風経路図を使用して再調査

これらのケースは、もっと正確なデータを用いると、実際は震源となるところの「真上を通った」のではなく、「迂回した」というのが正しいかもしれない。
そこで、2014年の台風19号の台風経路図データ(kmlファイル)を「デジタル台風」から入手して、Google Earthに取り込んでみた。


agora.ex.nii.ac.jp


まず、台風19号の経路の全体図は、下記の通りとなる。


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まず、この台風の概要を書いておく。
2014年台風19号(ヴォンフォン)は、2014/10/02にマーシャル諸島で発生した熱帯低気圧が10/03に台風になったもの。
10/13には一時的に大型で猛烈な台風となった。
沖縄本島に上陸した後、鹿児島県に上陸し、日本列島を縦断する形で何度も上陸・通過を繰り返し、広範囲で大雨や暴風の被害をもたらした。

沖縄周辺の2つの地震を迂回した?

台風の進路に沿って、地域ごとに細かく見ていくことに。
まずは沖縄周辺だが、下記のマップのとおりとなっている。


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上記の図を見ると、南の方から北進してきた19号は、沖縄本島の南方で進路を若干西へとそらして、10/12 0時頃に本島のど真ん中に上陸した。
その10日後の10/22 9:15に、沖縄本島近海(本島の北東沖)でM5.5の地震が発生した。

発生時刻 2014年10月22日 9時15分頃
震源沖縄本島近海
最大震度 震度4
位置 緯度 北緯 27.4度
経度 東経 128.7度
震源 マグニチュード M5.5
深さ 約50km


その後、台風19号は10/12の12時頃から進路を東の方へ変えていき、本州へと接近していった。
それから1週間ほどたった10/18の2:41に、奄美大島北西沖でM5.1の地震が発生した。

発生時刻 2014年10月18日 2時41分頃
震源奄美大島北西沖
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 29.7度
経度 東経 128.4度
震源 マグニチュード M5.1
深さ 約20km


これを見ると、台風は沖縄本島近海M5.5と奄美大島北西沖M5.1の震源となるところの西側を迂回して、本州へと進んでいったように見えるではないか。

近畿・東海地方でのアヤシイ動き

その後、台風19号鹿児島県に上陸し、北東方向へと、ほぼ真っすぐに進んでいった。
だが、四国を通過して近畿地方に差し掛かった時に、アヤシイ挙動が始まる。


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台風19号は、四国に上陸中に進路を若干北へ変えて進んだ。
上記のマップではまだ詳細がわかりずらいので、もっと拡大した図を下記に載せる。


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上記の図でわかるように、10/13に和歌山県に上陸したが、2日後の10/15に紀伊水道でM2.9の地震が起きた。

発生時刻 2014年10月15日 3時48分頃
震源紀伊水道
最大震度 震度2
位置 緯度 北緯 34.1度
経度 東経 135.1度
震源 マグニチュード M2.9
深さ 約10km


その後も紀伊水道では、10/19にM3.0、10/25にM2.7と、地震が続いた。

発生時刻 2014年10月19日 11時7分頃
震源和歌山県北部
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 34.2度
経度 東経 135.2度
震源 マグニチュード M3.0
深さ ごく浅い

発生時刻 2014年10月25日 11時0分頃
震源紀伊水道
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 34.2度
経度 東経 135.1度
震源 マグニチュード M2.7
深さ 約10km


また、10/23には奈良県でもM3.8地震が起きた。

発生時刻 2014年10月23日 4時47分頃
震源奈良県
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 34.4度
経度 東経 135.7度
震源 マグニチュード M3.1
深さ 約70km

 

奈良県-愛知県での進路変更

台風19号は、これらの地震震源となる地点を迂回しながら東へと進んでいったように思われる。
だが、上記の拡大する前のマップにあるように、10/23の21時頃に、奈良県で急激に(60度以上)進路を北へと変更した。
まっすぐ進むと、よっぽど会いたくない人がいた?
いや、人でなくて地震


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上記のマップを見ると、考えられる可能性としては、10/13に愛知県を通過してから1週間ほど後の10/21 15:37に愛知県西部でM3.3の地震が起きていることだ。


発生時刻 2014年10月21日 15時37分頃
震源地 愛知県西部
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 35.0度
経度 東経 137.0度
震源 マグニチュード M3.3
深さ 約40km

岐阜県での進路変更~長野県神城断層地震

台風19号岐阜県に入って、今度は10/14に進路をやや東へと変えた。
もし、19号が進路をそらさずにまっすぐ進んでいたとすると、そこには約1ヶ月ちょっと後の11/22にM6.7の大地震震源となる地点が待ち受けていた。
11/22 22:08に発生した長野県北部地震(長野県神城断層地震)M6.7、最大震度6弱の、この年最大の地震だ。

発生時刻 2014年11月22日 22時8分頃
震源地 長野県北部
最大震度 震度6弱
位置 緯度 北緯 36.7度
経度 東経 137.9度
震源 マグニチュード M6.7
深さ 約10km


さらに言えば、これは台風通過前になるが、9/27には木曽御嶽山で噴火が起きた。
その後のマグマの活動や火山性地震にも影響を受けているのだろうか?


いままで色々な台風を見てきた経験でいうと、規模が大きい地震ほど、台風は距離的にかなり前から反応して「迂回」を始めるのではないか。
また、時間的にもかなり早い時期から迂回が始まる。
このケースは、その両方に当てはまるかもしれない。

地震の巣である関東では多すぎて…

次の関東は、もう見る前に推測できるが、対応する地震が多すぎて、台風さんも避けて通るのがさぞかし大変だろうな。
岐阜県-長野県を経て関東地方に入り、台風は下記のルートを通った。


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10/14に栃木県を通過した19号だが、その後の10/18に栃木県北部でM2.7の地震が起きた。

発生時刻 2014年10月18日 13時8分頃
震源地 栃木県北部
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 37.0度
経度 東経 139.6度
震源 マグニチュード M2.7
深さ 約10km


また、10/23にも栃木県北部でM3.2の地震が起きた。

発生時刻 2014年10月23日 17時13分頃
震源地 栃木県北部
最大震度 震度3
位置 緯度 北緯 36.8度
経度 東経 139.6度
震源 マグニチュード M3.2
深さ 約20km


また、1ヶ月ほど後になるが11/12には茨城県北部でM4.7の地震が起きた。

発生時刻 2014年11月12日 9時53分頃
震源茨城県南部
最大震度 震度4
位置 緯度 北緯 36.2度
経度 東経 140.1度
震源 マグニチュード M4.7
深さ 約70km


さらに東の方を見ると、5日後の10/19に茨城県沖でM4.0の地震が起きた。

発生時刻 2014年10月19日 5時25分頃
震源茨城県
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 36.7度
経度 東経 141.5度
震源 マグニチュード M4.0
深さ 約30km


10/21には、福島県浜通りでM3.8の地震もあった。

発生時刻 2014年10月21日 5時25分頃
震源福島県浜通り
最大震度 震度2
位置 緯度 北緯 37.0度
経度 東経 140.7度
震源 マグニチュード M3.8
深さ 約10km


もっと他にも対応する地震があるかもしれないが、少なくともこれら5つの地震震源となる地点を、本当にうまくかいくぐってとして言えないが、台風19号は東北沖へと抜けて行った。

東北沖の地震

福島県沖へ抜けた台風19号は、下記のマップの通り、10/14の6時に、ほんの少しだが進路を東へ反らせて進んでいった。


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すると、翌日の10/15 23:05に、宮城県沖でM4.1の地震が起きた。

発生時刻 2014年10月15日 23時5分頃
震源岩手県
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 39.2度
経度 東経 142.5度
震源 マグニチュード M4.1
深さ 約30km


また、1週間後の10/21には同じ宮城県沖でM3.9の地震もあった。

発生時刻 2014年10月21日 8時53分頃
震源宮城県
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 38.3度
経度 東経 141.9度
震源 マグニチュード M3.9
深さ 約60km


実は上記の2つの地震震源がほぼ重なり合っていて、ピンマークもほとんど1つに見える。
両者の震源は1~2キロしか離れていなかったのだ。


このマップで見ると、進路を変えなければそのまま震源となる地点の真上を通っていったのではないか。


この他にも、10/14に通過してから4日後の10/18に宮城県沖でM3.4の地震があった。

発生時刻 2014年10月18日 11時3分頃
震源宮城県
最大震度 震度1
位置 緯度 北緯 38.9度
経度 東経 141.7度
震源 マグニチュード M3.4
深さ 約70km


また、9日後の10/23には、宮城県北部でM3.8の地震も起きていた。

発生時刻 2014年10月23日 22時21分頃
震源宮城県北部
最大震度 震度3
位置 緯度 北緯 38.7度
経度 東経 141.0度
震源 マグニチュード M3.8
深さ 約20km

 

まとめ

こうして台風19号と数多くの地震の関係を見てくると、ほとんどもう…障害物競争?
べつに台風に意思があって地震が嫌いだから避けて通っているわけではないだろうが。
地震のもつ「ポテンシャル」は、事前に接近してくる台風の進路を変えさせるだけの力をもっているということになるかもしれない。


以上は、いつも書いているように、あくまでも仮設であり、可能性にすぎない。
絶対そうだと言い張っているわけではない。


今後も、ネガティブな要因も含めて、探求を続けていくことにしたい。


ただ、今回はこの記事を書くための調査で、3時間以上費やしたかな。
これからTOCANAの原稿を1本書くけれど、これほどには時間がかからないだろう。


一つ一つ地震を調べていくうちに、ほとんど笑うしかないと思うほど、次々と該当するケースが見つかる。
このまま真っ直ぐに進んでいたら、震源となるところの真上を通過していただろうというケースが少なくないのだ。
今回、ちょっと自分の中で可能性が高まったという感触を得たかもしれない。


このような法則が本当にあるならば、ぜひ地震予知に役立てるようにしたいものだ。


最後まで読んでくださった方、お疲れ様でした。
ぜひ他のみなさんも、興味があったら色々な事例を調べてみてください。
…といいたいところだけど、ちょっとした準備が必要ですね。
といっても大したことはなく、必要なものはWindowsPCと、Google Earth Proというアプリケーション、台風進路のデータ(KMLファイル)程度です。
すべて無料で入手できるものです。


誰も聞きに来ないから書かないけれど、ある程度の要望があるならば、どこかで説明することにします。


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